理想への逃避
言葉はいつももどかしくて、話せば話すだけ、伝わらなくなる。
伝えたいと思えば思うほど、相手のことが見えなくなり、相手には伝わらなくなる。
自分と相手が使っている言葉はどうしても同じ意味にはならなくて、言葉は誰かを傷つける。
自分の中でも日々同じ言葉への想いは変化し、すべての意味が変わり続ける。
自分の言葉で相手に伝わるように伝えたいという私の理想は、単なる幻想でしかない。
向き合いたいと思うのは、理想を合わせることで、新しい選択肢を生みたいと思うのは、幻想でしかない。
自分が相手に押し付けているだけでしかない。
足掻けば足掻くほど相手も、自分さえも見えなくなる。
自分自身に傷つき、相手を傷つける。
理想ばかり見て、現実から逃げている自分に嫌気がさす。
ありえない理想を、叶えるための方法が見つからない。
考え方を変える方法も見つからない。
結局は現実逃避をしていたいだけなのだ。
人として価値のない、当たり前の知識すらない自分を、認めたくないだけなのだ。
自分を認めてくれる場所や理解してくれる相手、伝えられる自分、支えられる自分といったありもしない世界を空想して逃げている。
自分自身と向き合うことも、変わる努力もせずに。